ペルペルの「我思う故に我あり。」

日々、感じたこと綴っていきます^^

雨男

雨男(あめおとこ)⑩

命の尊さを知るものよ 僕は間違っていたのかい 男はそう呟き 青空に向かって叫んだ 僕はなぜ生きている 僕は何に生かされている もう僕の頭上に雨は降らないのか もう僕の頭上で涙は流れないのか いつも雨と共にあった いつも雨の音ですべてを誤魔化してきた…

雨男(あめおとこ)⑨

日のあたる場所 日の光が いつしか男を蝕んでいた その事に男は気づかず歩いていた 日の光が嫌いなのは 生まれついての事だ 子供の頃から雨の音が好きで 黒い雨雲が見えると元気になった 孤独は男を癒し 明日への活力に変えた もう雨の降らなくなった世界は …

雨男(あめおとこ)⑧

短い人生 雨の終わり 音も立てずに静かに眠る 男はすべてが終わったと確信した 心から笑った事がない 本気で怒った事もない いつも静かに平静を装っていた いつも真実を誤魔化してきた 着眼点は良くも悪くもなく 冗談に笑うこともしなかった 屍が譲り合う世…

雨(あめおとこ)⑦

雨がしんしんと降っている 片手に持ったナイフから血が滲む 気がついたら天を仰ぎ 何かを呪文のように唱えている 神様はいない 神様を裏切った 男が誰かのために初めて流した涙は 雨に流されていった いつものように平静を装えばいい それですべてうまくいく…

雨男(あめおとこ)⑥

雨の音を感じて生きている 雨の感触を味わい生きている 夢のような毎日なら 人は幸せを見失ってしまう 現実と虚構を演じきって男は問う 獣と人間の差は何なのか 人は何故涙を流すのか 痛みとは何処からくるのか 愛とは何なのか 暗い闇が男の影を引き立てる …

雨男(あめおとこ)⑤

男が来ると雨が降る 男がいると雨が降る 周囲はそう囁くようになり 男は孤立する 雨のもたらす悲劇と 雨のもたらす恵みを総じて男は言う 人とはその程度のもの 一方的な見方しかできないと 男は言う 運命には逆らえないと 男は言う 夢や希望は失ったと にほ…

雨男(あめおとこ)④

消えかけた騒音は男を狂気に変えた 音のない世界は男を狂気に変えた 裏切られたと思い込んでいた 優しい笑顔が少しずつ消えていった 夢は夢のままがいいと言う 夢は憧れのままがいいと言う 男は身をもってそれを知り もがき苦しみ考えていた 雨の中を走って…

雨男(あめおとこ)③

気づいたら雨の中 真っ白な世界にいた 雨音の聞こえないその場所で 男はもがき苦しんでいた 気づいたら男はいつも雨の中を ひたすら何かに向かって走っていた 聞こえない声に耳を傾け 前に向かって走っていた 今はもう何も感じないと 雨のない世界に戸惑って…

雨男(あめおとこ)②

男は雨の中を走っていた 彼女に会うために 彼女とは滅多に会えないから 男は彼女会いたさに急いで身支度をした ドアを開けて走り出す 雨の中を駆け出した 傘もささずズブ濡れで それでも男は走っていた 街の喧騒は流れてゆく 街の騒めきは雨に掻き消される …

雨男(あめおとこ)①

雨は男を待っていた 雨はその男の企みに気づいていた 男は雨を好んでいた 全ての騒音を掻き消して雨音だけが響く そんな状況が好きだったのだ 子供の頃からそうだった 雨の音だけが友だった そう思い込んでいただけかもしれない 男は雨音に心を奪われていた…